行政書士試験の難易度は?仕事内容や年収、試験の概要を徹底解説!
目次
- 行政書士とは?
- 行政書士の平均年収は?需要は高い?
- 行政書士試験の合格率は?難しいの?
- 行政書士資格取得の4つのメリット
- 行政書士試験の概要
- 行政書士試験ではどんな問題が出る?過去問を紹介!
- 行政書士資格はどう活かせる?
- 行政書士になるための他の手段
- 行政書士試験まとめ
さっそく問題を解く
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「行政書士」という名前は知っているものの、実際はどんな職業なのかがわからないという方は多いのではないでしょうか。
行政書士は、簡単にいうと、行政に提出する書類についてアドバイスをくれたり、代わりに作成や手続きをしてくれたりする、非常に頼りになる存在です。
本記事では、行政書士の仕事内容を分かりやすく解説していきます。
さらに、行政書士試験の難易度や資格取得のメリット、試験概要を詳しく紹介していきます。
行政書士資格の取得を検討している方に役立つ内容が盛りだくさんですので、ぜひ参考にしてくださいね。
行政書士とは?
行政書士とは、行政書士法に基づく国家資格者で、主に官公署へ提出する書類、各種許認可申請に関する書類、事実証明に関する書類の作成や手続きの代理・相談を行います。
では具体的に、「行政書士とは何をする人なのか?」について、初めての方にも分かるように解説していきます。
行政書士の仕事内容
行政書士の仕事内容は、行政に提出する様々な申請書類の作成や提出手続きの代行、事実証明書類の作成などです。 さらに詳しくみていきましょう。
仕事内容は大きく以下の3つに分類されます。
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▼行政書士の仕事内容
- 書類の作成業務
- 書類提出手続きの代理業務
- 行政手続きや各種書類の作成に関するコンサルティング業務
そして、行政書士が作成・提出の代理・コンサルティング業務を行う書類は、主に以下の3種類です。
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▼行政書士が関与する書類
- 官公署に提出する書類
(例:許認可申請、建設業許可、風俗営業許可、飲食店営業許可、法人設立の申請書など) - 権利義務に関する書類
(例:各種契約書、示談書、遺産分割協議書 など) - 事実証明に関する書類
(例:会計帳簿、貸借対照表、内容証明郵便 など)
それぞれの書類について、詳しくみてみましょう。
▶官公署に提出する書類
※官公署:国、都道府県庁、市役所・区役所、役場、警察署、消防署、税務署などの公の機関
官公署に対して提出する書類は1万種類を超えるといわれており、そのほとんどは、個人や法人が特定の業務や営業を行うために必要な「許認可申請」に関するものです。
例えば、飲食店を開く場合は保健所の「飲食店営業許可」、運送業を営む際は運輸支局の「自動車運送事業許可」が必要となります。
許認可申請の例について、詳しくは以下をご確認ください。
例1. 飲食店を開くとき |
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【食堂、レストラン、バー、居酒屋等】 ・飲食店営業許可申請(保健所) ・防火対象物使用開始届(消防署) 【キャバレー、スナック、キャバクラ、ナイトクラブ、パチンコ店等】 ・風俗営業許可申請(警察署) ・飲食店営業許可申請(保健所) ※飲食等を伴う場合防火対象物使用届(消防署) ・防火対象物使用届(消防署) |
例2. 運送業を始めるとき |
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(地方運輸支局に対して) ・旅客自動車運送事業許可申請 ・貨物自動車運送事業許可申請 ・特殊車両通行許可申請 ・貨物軽自動車運送事業許可申請 ・自動車運行代行業の認定申請 |
※参考:許認可申請|日本行政書士会連合会
その他、法人設立時に必要な一連の手続き、日本の国籍を取得するための法務局に対する帰化申請なども行政書士の業務に含まれます。
▶権利義務に関する書類
権利義務に関する書類は、ある特定の権利の発生・消滅・存続・変更などの効果を生じさせるための意思表示としての役割を果たす書類です。
例えば、「各種契約書(売買・賃貸借・請負など)」「遺産分割協議書」「示談書」「内容証明」などがあります。 権利義務に関する書類は、当事者の権利を守り、法的な効果を発生させるための証拠や後ろ盾となってくれる重要な書類で、当事者の人生を変えることもあるのです。
▶事実証明に関する書類
事実証明に関する書類は、社会生活における事実を証明するための書類で、契約書や申請書の内容を証明するための添付書類として指定されることもあります。
事実証明に関する書類の例としては、「各種議事録」「会計帳簿」「財務諸表」「申述書」「店内配置図」などが挙げられます。
行政書士の専門分野
行政書士の主な専門分野は、下記に示す12種類です。
行政書士は、下記の分野に「困っている人」や、「専門家の手を借りたい人」に対してサービスを提供し、法に準じた健全なビジネスや社会生活を送れるようにサポートします。
▼行政書士の専門分野
暮らしに関する分野 |
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1. 遺言・相続 遺言書作成の支援、相続手続の相談・支援、遺産分割協議書等の作成 など |
2. 契約書 土地・建物等の賃貸借・売買契約書、金銭の消費貸借契約書、交通事故に関わる事実調査や自賠責被害者請求等の手続き など |
3. 自動車登録 マイカー・社用車の購入・保有にあたるナンバー変更や名義変更等の自動車登録申請 など |
4. 日本国籍取得 外国籍を持つ人が日本国籍の取得を希望する際の帰化申請の手続き など |
5. 土地活用 従来農地として使用していた土地に住宅の建設をしたり、新たに農地を確保して農業を開業したりする際に必要な農地転用の許可申請手続き など |
6. 内容証明 法的なトラブル防止のための内容証明郵便の作成・送付、強い証明力をもつ公正証書の手続き、債券債務問題に関する証明書類の作成 など |
ビジネスに関する分野 |
7. 外国人雇用関係 外国人を雇用したい場合の出入国在留管理局への申請手続き(在留資格認定証明書交付申請、永住許可申請 など) |
8. 法人関連手続き 法人(株式会社、NPO法人、組合等)の設立手続きや事業運営の支援、会計記帳や財務諸表の作成、会社定款の作成・変更 など |
9. 許認可申請 個人や法人が事業を始めるための各官公署に対する許認可申請手続き |
10. 中小企業支援 法人設立や許認可申請等の書類作成・手続き代理を通じた起業〜事業活動についての助言や提案、事業承継や補助金・助成金申請に関する助言や提案 など |
11. 知的資産・知的財産 著作権の保護、農業分野における品種登録、特許権や商標権の登録申請 など |
12. 電子申請・電子調達 デジタル・ガバメントの取組により普及している電子申請や電子調達の手続きの代理 など |
行政書士の平均年収は?需要は高い?
行政書士の平均年収は、約400万〜600万円といわれており、厚生労働省の統計によると、平均で約584万円となっています。
※参考:行政書士|厚生労働省 職業情報提供サイト jobtag
独立すると年収1,000万〜2,000万円以上となる人もいるようです。
また、行政書士の需要は非常に高く、今後も高水準が保たれるといえます。
なぜなら、行政関連の書類作成や手続きなどは、法人や個人が社会生活を送る上で必ず必要となるといっても過言ではないためです。
IT化が進むなかでも、現状では書類や手続き自体がなくなるわけではないため、行政の煩雑な手続きを理解している行政書士の手を借りたい人は多いでしょう。
行政書士試験の合格率は?難しいの?
行政書士試験の合格率は、例年10〜15%を推移しています。
つまり、行政書士試験は10人に1人程度しか受からない難易度が高めの国家試験だといえます。
ただし、他の法律系の国家資格である弁護士、弁理士、司法書士などのなかでは難易度は低めであり、「法律系資格の入門」として受験している方も多いようです。
過去10年間の合格率の推移は以下のグラフをご確認ください。
行政書士資格取得の4つのメリット
行政書士の資格を取得するメリットとして、以下の4つが挙げられます。
▼行政書士資格取得の4つのメリット
- 就職・転職・キャリアアップにつながる
- 年収アップを目指せる
- 日常生活にも役立つ法律の知識が得られる
- 難易度が上位の国家資格の基礎固めになる
それぞれ詳しくみていきましょう。
就職・転職・キャリアアップにつながる
行政書士の資格を取得すると、就職・転職活動で有利になったり、会社や事務所内での昇格やキャリアアップにつながったりします。
なぜなら、採用担当者や会社の上層部から、「一定の法律知識がある」「難しい試験に合格するだけの意欲や学力がある」と評価されるためです。
どんな企業でも法律系の知識や様々な行政手続きは必要となるため、行政書士の専門知識をもった人材は、企業の健全で円滑な経営に貢献できます。
行政書士としての独立や事務所の所属などを考えていない方でも、取得しておくと将来の自身のキャリアに役立つ資格だといえるでしょう。
独立開業を目指せる
行政書士の資格を取得すると、独立開業を目指せます。
資格さえ取得すれば、行政書士として自身の裁量で自由に働くことができ、頑張り次第では年収を大幅にアップさせることも可能です。
もちろん、仲間と行政書士法人を立ち上げたり、副業として収入の柱を増やしたりすることもでき、選択肢は数多くあります。
自身の働き方や収入面でも、独立開業に繋がる行政書士資格の取得にはメリットがあるといえるでしょう。
日常生活にも役に立つ法律の知識が得られる
行政書士の勉強で得られる知識は、日常生活にも役立ちます。
なぜなら、日常生活の中でも行政に対して行わなければならない手続きや、提出すべき書類に出会うことは多くあるためです。
例えば、親族や家族が亡くなった時の相続に関する手続きや、不動産や住宅ローンなどの契約に関する知識は、いつ誰に必要となってもおかしくありませんよね。
本来は専門家に聞かなければわからない内容も、資格を持っていればスムーズに、少ないストレスで手続き等を進められ、さらには家族や友人の相談に乗ることも可能です。
難易度が上位の国家資格の基礎固めになる
行政書士の資格は、法律系の他の国家資格(弁護士・弁理士・司法書士など)や公益性が高く難易度高い税理士・公認会計士、社労士などの国家資格の基礎固めにもなります。
なぜなら、行政書士は上記の資格の中でも難易度が低めであり、受験資格もなく誰でも気軽に受験できるためです。
また、基礎固めだけではなく、行政書士の資格と併せて他の資格も取得し、ダブルライセンスとして業務に活かす方も多くいらっしゃるようです。
【補足】行政書士とのダブルライセンスにおすすめの資格! |
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1.司法書士:登記や訴訟に関する法律の専門家 法人設立や不動産の契約においてワンストップで対応できる |
2. 社会保険労務士:社会保険や労務関連の専門家 人事労務関係の書類も踏まえて法人設立に幅広く対応できる |
3. 中小企業診断士:企業の経営・財務状況の分析の専門家 企業経営に幅広く関わり、コンサルタントとしての業務もできる |
4.宅地建物取引士:不動産取引の専門家 不動産取引に特化した業務展開で差別化ができる |
行政書士資格取得のメリットについて解説してきました。
メリットを知るとますます取得の意欲が湧いてくる方も多いのではないでしょうか。
では、「行政書士試験」の概要について、以下で詳しくみていきましょう。
行政書士試験の概要
行政書士試験は、年に1回、11月の第2日曜日に全国47都道府県の会場で一斉に実施されます。
全60問、2科目から構成される試験です。
詳しい試験内容や詳細は、以下の表をご確認ください
▼行政書士試験の概要
試験について | 行政書士の業務に必要な知識及び能力を問う国家試験 |
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受験資格 | なし (年齢、学歴、国籍等に関係なく誰でも受験可能) |
試験日 | 11月の第2日曜日(年1回) |
試験時間 | 13:00〜16:00 |
受験申込期間 | 7月下旬から約1ヶ月間 |
試験科目と内容 | 「行政書士の業務に関し必要な法令等」:全46問 憲法、行政法の一般的な法理論、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法を中心とする。)、民法、商法及び基礎法学 「行政書士の業務に関連する一般知識等」:全14問 |
試験方法 | 筆記試験 「行政書士の業務に関し必要な法令等」:択一式及び記述式 「行政書士の業務に関連する一般知識等」:択一式 |
配点 | 「行政書士の業務に関し必要な法令等」:全46問・244点満点 5肢択一式:4点/1問(全40問) 多肢選択式:8点/1問 空欄(ア〜エ)1つにつき2点(全3問) 記述式:20点/1問(全3問) 「行政書士の業務に関連する一般知識等」:全14問・56点満点 |
合格基準点 | 以下①〜③を全て満たした者
①「行政書士の業務に関し必要な法令等」科目の得点が244点満点中122点以上である者 |
試験場所 | 全国47都道府県の会場(住民票記載住所関係なし) |
受験手数料 | 10,400円 |
申込方法 | ▶インターネットによる受験申込み(公式HPから外部サイトへ遷移) (1)申込の手順にしたがって必要事項を漏れなく記入する ※申込の際には、顔写真の画像データ(JPEG形式・高さ320×幅240ピクセル)が必要 (2)クレジットカード又はコンビニエンスストアにて受験手数料(10,400円)の払込みを行う (3)登録と受験手数料の払込み完了後、「登録完了メール」を確認する (1)受験願書(※配布場所一覧)に必要事項を記入する |
行政書士試験ではどんな問題が出る?過去問を紹介!
試験の概要を掲載しましたが、より具体的なイメージを持つために、実際の過去問を少し紹介します。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」科目 行政手続法に関する問題 |
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正解:1 |
「行政書士の業務に関し必要な法令等」科目 民法に関する問題(記述) |
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正解例:無権代理人を相続した本人が無権代理行為の追認を拒絶しても信義に反しないため、認められる。 |
「行政書士の業務に関連する一般知識等」科目
政治・経済・社会に関する問題 |
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正解:3 |
過去問のデータは行政書士試験の実施団体である行政書士試験研究センターのHPにも掲載されていますので、ぜひご確認くださいね。
行政書士資格はどう活かせる?
行政書士に合格した場合、その後のキャリアとして代表的な以下の3つをご紹介します。
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▼行政書士資格の活かし方
- 企業内行政書士として就職する
- 行政書士法人や事務所に所属する
- 独立開業する
それぞれみていきましょう。
企業内行政書士として就職する
行政書士の知識やスキルは、企業において主に「総務」や「法務」関連の部署で活かすことができます。
総務ではさまざまな書類の取りまとめや手続きなどの事務業務を行い、官公署とのやりとりも発生します。
また、法務では取引先や顧客との契約書の作成や紛争予防、リーガルチェックなど、法律関連の知識が役にたつでしょう。
資格保持者として重宝されることが多く、安定した収入を得ることができるのもメリットといえます。
行政書士法人や事務所に所属する
行政書士法人や、行政書士が複数在籍する事務所に所属し、行政書士としての知識やスキルをさらに磨いていくことも1つの選択肢です。
行政書士事務所は個人で行っているケースも多く、求人が少ないことも考えられますが、身近で先輩行政書士の仕事ぶりを見ながら自身のスキルを磨ける非常に良い環境だといえるでしょう。
後々独立を考えている人でも、まずは経験を積むために行政書士法人や事務所に所属される方が多くいらっしゃいます。
独立開業する
行政書士のキャリアや収入面での大きなメリットは、独立開業ができることです。
なぜなら、独立開業すれば、自身の裁量である程度自由な働き方ができるうえに、仕事を取れば取るほど、単価が上がれば上がるほど、自身の収入アップに直結するためです。
ただし、独立するには多額の初期費用がかかり、しっかりとしたスキルを身につけていなければ、案件が増えず収入が不安定になる可能性もあります。
独立は非常に魅力的なキャリアですが、実務経験がない場合、まずは安定した知識とスキルを他の方法で磨いていくのがおすすめです。
行政書士になるための他の手段
実は、行政書士の資格を取得するためには、「行政書士試験に合格する」他に、以下の2つの手段があります。
これから行政書士試験を受験される方は、当てはまらないケースが多いかもしれませんが、今後のキャリアを考えるうえでぜひ参考にしてください。
▼行政書士になるための他の手段
弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格を取得する 弁護士・弁理士・公認会計士・税理士のいずれかの資格を取得した場合は、行政書士の資格を有し、行政書士の業務を行うことが可能です。 (※行政書士法第2条2〜5項) 公務員の特認制度を利用する 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間が17年以上(中卒者は20年以上)になる者は、行政書士としての資格を有し、行政書士の業務を行うことが可能です。 (※行政書士法第2条6項) |
行政書士試験まとめ
行政書士の仕事内容は、官公署に提出する書類・権利義務に関する書類・事実証明に関する書類の作成や手続きの代理、それらに伴う相談業務です。
合格率は10〜15%と、10人に1人程度しか受からない難易度の高い試験です。
しかし、社会生活に必要な手続きやその法律に関する専門家であるため、法人・個人両方から重宝される存在であり、需要も高くなっています。
行政書士の資格を取得すれば、自身のキャリアアップや収入アップ、独立開業など、幅広い道がひらけていくはずです。 法律系の資格のなかでは比較的取り組みやすい資格でもあるため、本記事を参考にぜひ受験を検討してみてはいかがでしょうか。